出生前診断とは
欧米諸国では先天異常のリスクが高く、胎児の出生前診断の需要が極めて高いものです。
一般的に、胎児に先天異常がある場合、胎児のみならず母体にも出産時のリスクが高いため、出生前に胎児の状況を知ることによって、出生後の母体と新生児に対する有効なケアを準備することができます。例えば、欧米では全出生の10%(日本人の10倍の発生頻度)が胎児と母体のRh型不適合妊娠(血液型不適合妊娠の一種)で流産のリスクに瀕しますが、妊娠初期にグロブリン製剤を投与することによって流産を回避することができます。
近年、日本を含め、欧米諸国では出産の高齢化が進行しています。高齢出産の場合、通常2本の染色体が1本や3本になる染色体異常(染色体数的異常)が発生する頻度が高くなります。染色体にこのような数的異常がある場合、胎児の器官形成不全などの合併症を誘発する場合があります。
欧米各国ではこのようなリスクに対し、出生前に胎児の先天異常の有無を検査する出生前診断の需要が高く、以下のような診断・検査を実施しています。
- 羊水検査・・・妊婦の腹部に針を刺して、羊水内の胎児細胞を採取し、数週間培養した後、胎児細胞中の染色体や遺伝子の異常を分析します。
羊水検査は、胎児有核細胞の遺伝子・染色体を解析するため確定的な結果が得られるが、胎児細胞のサンプリングのために腹部に針を刺すことで、流産のリスク(1/500〜1/1000)を伴う侵襲的な確定検査となります。 - 母体血清マーカーテスト・・・妊婦の採血を行い、血液中に存在するタンパク質の量を測定し、正常パターンと比較することで、先天異常のリスクを判定します。
母体血清マーカーテストは、母親の末梢血の採取で済むためサンプリングに流産リスクはありません。一方、先天異常のリスクが確率的に判定されるだけであり、実際に先天異常があるかどうかは判定することができない非侵襲的な非確定的検査です。マーカーテストで先天異常についてハイリスク妊娠と判定された場合、流産リスクのある羊水検査が実施されています。
このような出生前診断は、欧米諸国を中心に年間500万件以上実施されています。また、近年環境汚染による先天異常の発生率が高まっている中国や、遺伝性の重篤な貧血が問題となっているバングラディッシュ、インドネシア、パキスタンなどでも、今後年間数百万件の出生前診断が必要とされています。
